岸原オカルト研究部

プログラミングを勉強していくブログです

本・論文レビュー(四冊、心理学、発達障碍関連)


 素敵な夜ですね。

 先日知人からの依頼があり発達障碍・発達障碍傾向が改善されうるのか数冊の本で調べました。
 せっかくなので記事にします。このブログは秘された事象ならどんな事でも探求します。
 結論から言えば、よくわかりませんでした。
 まず本をまとめ、その後に考察します。

 なお、病気でも故障でもないと考えているので治る・直るという漢字は使っていません。


自閉症スペクトラム 10人に一人が抱える生きづらさの正体(SB新書)

・「こだわり保存の法則」を提唱している。
 自閉症スペクトラムの方はこだわりの対象が薄くなっても、常に何かに対してこだわる。
 コンディションが悪ければ悪いほど、そのコダワリは狭くきつくなっていく。

・二次障碍への対策面から、「トップダウン」(独自の用法と思われる)の教育方針をオススメしている。
 トップダウンとは、「できないことはできないままでいい」という教育法。

・どんなに努力しても自閉症スペクトラムの症状がゼロになった自閉症スペクトラム持ちはゼロと主張している。
 IQの上昇も無関係。

・世間には「問題が発生しないと自閉症スペクトラムと診断できない」という医師もいるが、
 「華々しく問題(含むトラウマ)を解決しないと見栄えが悪い」という良くない意識の現れなのではないか。

「発達と脳(医学書院)」記載の論文

・脳のニューロンは報酬とドーパミンで強化される。
 幼少期に応用行動分析さえあれば、発達障碍保持者の欠点部分が、一般者とほぼ互角になる事もありうる。
 今後の動物実験の進歩を期待する、との事。

アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?(講談社

・「逆耐性現象」を提唱している。挫折によって弱くなる現象。二次障碍の事か?

アスペルガーの人は強迫性障碍を負いやすい。次に抑うつ。人格障碍との併存も有りえ正確な病名の特定は困難。
 アスペルガーの人と境界性人格障碍者との見分けがつかないことを「重ね着症候群」と言い、
 また極めて厄介なことに本当に併発している存在もいる。

・さまざまな形式の不適応とその対策について語られている。
 特に、「常識で考えれば当然の行為に対し、なぜこんなことをしなければならないのか」疑問に思う患者に対し、
 「これはこういった慣習である」と説明する等。

・「能力によるカバーを諦めるべきではない」という論調が強い。
 特に、「想像力の質が健常者と異なる」の欄。
 一般者だって、無人島に放り込まれたときや、複雑な概念を与えられた時(不得意分野に触れた時)、その想像力は硬くなるだろうと指摘。
 アスペルガー者も想像力を働かせることを諦めるべきではないとしている。
 また、「心」とは、他人の要求に答えることができた成功体験の繰り返しによってできる幻想に過ぎないと論じ、
 人類学者が精霊信仰の民の中に混じりいつしか精霊が見える事に例え、
 アスペルガー者も心を理解しようとする戦略を取れるという立場を取る。

・そして、「アスペルガー文化の確立」という、ある意味逆転的な提言も行っている。


広汎性発達障碍児への応用行動分析(二瓶社)

・応用行動分析とは発達障碍の軽快を狙う手法。

・あくまで応用行動分析は科学でなく手法・知恵とし、発達障碍はナオるか等の記述は見られない

・ただ、夜に起こしての排尿など、努力と工夫で発達障碍チリョウを行う実践的なノウハウが記述されている。
 あまりにうまくいく例ばかりなので、ひょっとしたら発達障碍は生後数年の教育でなんとでもなるのではないか、
 そんな気分になるが、きっとそうではないのだろうし、そういう内容の本でもない。

本のまとめ

 総合して考えれば、発達障碍は最新の科学ではナオる事もあるというのが正しいのではないのかと思われる。
 少なくとも、幼少期の脳が発達し続ける時期、
 人と触れ合い、その事で報酬を得続ければ、ナオるのではないかという見方はたしかにある。

 大人になってからはわからない。


最終的な謎

 また、最終的な謎がある。

「一般者が自閉系スペクトラムを持つ事はありうるのか?」。

 自閉系スペクトラム者が応用行動分析とドーパミンと報酬によって一般者と同様の神経回路を手に入れるのなら、
 一般者がドーパミンと報酬によって自閉系スペクトラム者と同じような神経回路を手に入れる事もありうるはずだ。
 そういった症状を示す方をここで仮に偽自閉系スペクトラム者と呼ぶ。

 偽自閉系スペクトラム者は自閉系スペクトラム者とも一般者とも馴染めず社会に溶け込めない。
 だが、訓練によって一般者と変わらない脳の能力を得ることができる。

 「自閉系スペクトラムは白黒ではなくグレー」とはよく言われるが、
 生来のグレーだけでなく、黒を塗りつけることで生まれるグレーはあり得るのだろうか、
 各者の対応のためにそこそこ重要な視点ではないかと思うがどうか。

 アルコール不耐症と同じだ。
 アルコールに弱いが克服可能な者にとっては、自分がそうであると理解できることは希望となる。
 逆に、本物のアルコールの不耐症者は、アルコールに弱いが克服可能な者によって被害を受ける。
 彼らは克服できてしまうからだ。

 アルコールの耐性の知識すら行き届いていない以上、
 自閉系スペクトラムについての知識が人口に膾炙する事はないだろうが。


まとめ


 結局大人がどうかについては謎な上、別の話が出てきて困りました。
 「最終的な謎」については、人体実験が必要になるはずですので、未来永劫判明することはないでしょう。

 「広汎性発達障碍児への応用行動分析」には、スペクトラム者に対し、
 体系だった手法でのふれあいを重ねた事で傾向が和らいだ症例が載っています。

 全て、大人になってからも間に合うのかどうか、識者に質問したいところです。



現在岸原オカルト研究部では、オカルト(心理学)を研究しています。
twitter:@kisihara_c